ホーム > おいしい舞台裏 >  北海道固有の資源活用「エゾ鹿肉メンチコロッケ」

研究者×企業インタビュー「おいしい舞台裏」加工編

北海道固有の資源活用「エゾ鹿肉メンチコロッケ」|衛生的でおいしい鹿肉を、もっと家庭の食卓に|オホーツク圏地域食品加工技術センター 研究員 抜山嘉友さん,株式会社 アイマトン 代表取締役 岩井政海さん,

Outlineメンチカツではなく、コロッケである理由

写真

エゾシカ食肉事業協同組合の組合員が扱う鹿肉は、狩猟から処理、流通まで一貫してエゾシカ協会推奨制度のルールにのっとって行う衛生的な食肉。駆除ではなく、食肉を目的として専門的にハンティングされたものと、写真のように生体捕獲後に一時養鹿(ようろく)されたものがある 写真提供/(株)知床エゾシカファーム

北海道全域で深刻な農林業被害を起こしているエゾシカ。その捕獲と共に、北海道固有の資源としての有効活用が加工食品の分野でも検討されてきました。「エゾシカの問題に対しては、t(トン)レベルでの消費をにらんだ商品開発が必要」というのは、平成18(2006)年からエゾシカを研究テーマにしてきたオホーツク圏地域食品加工技術センターの抜山嘉友さん。「道内6事業所で構成されたエゾシカ食肉事業協同組合では、エゾシカ協会認証の推奨制度に沿って衛生的な鹿肉を供給しています。商品化に向けては、この食肉の有効活用も同時に図れることを考えました」と話します。

もう一つ、抜山さんが研究に着手した当初からの課題が「低利用部位の利活用」です。ロースやモモ、ヒレ肉に流通が偏り、一方で在庫が山となって残るバラ、ネック、スネ肉をどう利用するか。部位に偏らないバランスのよい用途開発をめざし、これまでにも肉醤油やソーセージを製品化していますが、それらはいずれも「珍しさ」先行の特殊なもの。鹿肉の普及には、もっと家庭の食卓に上りやすい庶民的なものが必要でした。そしてそれがコロッケだった、と抜山さんはいいます。

開発者曰くの「肉がいっぱい入ったコロッケ」は平成23(2011)年7月、店頭に並びました。販売者であるアイマトンの代表取締役、岩井政海さんも「コロッケという点が魅力」と話します。「スーパーでは何種類もの冷凍コロッケが売られています。そのバリエーションを増やす面でも、メンチコロッケはいい商材だと思いました」。滝川市に本社を置く同社はエゾシカの販売実績でトップシェアを誇る食肉会社。札幌をはじめ、自社店舗を含めた販売網が道内全域に広がっています。

Material筋肉色素や脂肪の性質の違いを混合肉でカバー

写真

高タンパク、低脂肪、鉄分などのミネラルも豊富なエゾシカ。ルールのもと一発で仕留めた後、2時間以内に血抜きをするなど正しく衛生的に処理された肉は、臭みもクセもなく美味

抜山さんは利活用を考えると同時に、肉質の研究も進めてきました。「料理なら性別や年齢などで肉質に違いがあっても、さじ加減で調整していけますが、加工の分野では今日と昨日で品質が違うなどというのはお話になりません」。そのためにも知る必要があった肉質ですが、筋肉色素についてはメスのほうが年齢によらず赤味が強いことがわかりました。また、脂肪の融点は牛肉の37℃よりも高い約45℃が平均値で、人間の体温では溶けない脂。肉そのものは低脂肪でヘルシーながら、脂肪だけを見た場合には少々厄介なものということができました。

食肉製品では、ベーコンやロースハムなどのように一つの個体の一本の筋肉を使って作る「単身品(たんみひん)」があります。しかし脂肪の融点が高く、年齢や性別などでいろいろな差が肉質に出てくるエゾシカは、単身品に代表されるような個体の性質がはっきり現れる加工品には向きません。しかも、活用すべきは低利用部位。色や脂肪の性質の違いを十分カバーし、複合することで均質になる加工品として、挽き肉やペーストなど混合肉の使用が導かれ、自然な流れの中でメンチコロッケに行き着いたといいます。

Technology本来の味や食感を引き立てる調味・加工

写真

コロッケを揚げつつ、塩ダレに山ワサビを調合する抜山さん

「混合肉の利活用にのめりこむ感じで試作をしていった中の一つに、今回のメンチコロッケがあった」と話す抜山さん。口溶けのよいクリーミーさを出すためジャガイモをブレンドし、相性のよかったオホーツク産の天然ホタテエキスを加え、肉のうま味を引き立てるスパイスを調合。「こだわりたかったのは、鹿肉の味や食感をわかってもらえる調味・加工で、肉の色も活かしたいと思いました。中でも重要だったのがスパイスの役割です。基本は、鹿肉を食べ慣れた人も、初めて食べる人も双方が納得できる味付け。食肉事業協同組合が提供している、きちんと処理された鹿肉は豚や牛よりクセがないくらいで、その肉の味を消さないように留意しました」

エゾ鹿肉メンチコロッケは、北見市にある地ビールレストラン「オホーツクビアファクトリー」でもメニューとして出されることになり、そこでしか味わえない専用の塩ダレも抜山さんが開発。「網走産の山ワサビが効いた美味いタレができました。食べ方は、コロッケにかけるのではなく、コロッケをタレにつけて食べる。そうすると不思議なことに辛味が中和されますが、ワサビのツンとくるフレーバーが残り、爽やかな印象です」

Market1頭を無駄なく消費できる商品構成

写真

冷凍の「エゾ鹿肉メンチコロッケ」は1パック8個入り

アイマトンがエゾシカの肉を扱い始めたのは、平成18(2006)年から。顧客には外食店が多く、売れるのはもっぱらロースやモモ、ヒレ。余ったバラやスネ、肩肉などはペットフードにしたり、不本意ながら廃棄したり。しかし「それもやっと解決しつつある」と岩井さんはいいます。その要因の一つが、平成22(2010)年11月に自社の店舗で試した肩肉やスネ肉の販売でした。「やってみたら売れたんです」と岩井さん。これを受けて、高級部位はレストラン、普及部位はスーパーへ。すると当然のことですが、普及部位からも端材(カットした後の切れ端)が出るようになりました。「それを抜山さんのコロッケに使えば、高級部位と普及部位と加工品という3つで1頭のエゾシカがまるまる出ていく。コロッケは、手間をかけて衛生的に管理してきた食肉を無駄なく使える、価値ある受け皿なんです」

コロッケの原料となる鹿肉は、食肉事業協同組合に所属する知床・阿寒・静内の提携牧場から岩井さんのアイマトンで仕入れたものを活用。同社が掲げる平成23(2011)年の目標出荷量は前年の700頭を大幅に上回る1200頭で、順調に延びているといいます。そして抜山さんが「家庭の食卓にも上り、学校給食や病院、社員食堂などでも大量に消費できるような、鹿肉普及の牽引役になれるアイテム」として考えたメンチコロッケについても、「きちんと売れる商材として期待しています」と高く評価。自社店舗でも販売したいと話し、その実績を裏づけとしてスーパーなどへの拡販を進める計画です。


写真

発売の4カ月前に行われた「2011 食クラ・フェスタ」の試食でも確かな評価を得た

写真

「オホーツクビアファクトリー」(北見市)のランチメニュー。山ワサビ入りの塩ダレはこのレストラン専用で、コロッケをつけて食べる

ページの先頭へ戻る

Copyright © Hokkaido