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研究者×企業インタビュー「おいしい舞台裏」加工編

エイ軟骨由来「コンドロイチン」|素材の力で「完全無添加」を実現した栄養補助食品|北海道立総合研究機構 中央水産試験場(元釧路水産試験場) 武田忠明さん,丸共バイオフーズ株式会社 代表取締役社長 宮本宜之さん,

Outline“おかず”とは違う水産加工食品の必要性

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利尻や礼文など、稚内の周辺海域はカスベの一大産地でもある

北海道では「カスベ」として親しまれるエイ類。その軟骨に着目し、関節痛や腰痛への効果などで知られるコンドロイチン硫酸を商品化したのが、稚内市の丸共水産です。当初は社内にサプリメント事業部を立ち上げ、販売開始から2年ほど経った平成15(2003)年に丸共バイオフーズを設立。社長には、自ら研究開発にあたった宮本宜之(のぶゆき)さんが就任しました。

大学でアミノ酸などの研究をし、卒業後は製薬会社に勤務。研究畑を歩いてきた宮本さんが故郷・稚内に戻り、丸共水産に入社したのは32歳の時でした。見回してみれば水産業は漁獲量も減り疲弊状態。会社は昔ながらに生鮮とすり身などの加工品を扱っていましたが、「何か新しい事業を創らなければ将来的に厳しい」と感じたといいます。そして芽生えてきたのが「これまでの“おかず”とは違うアプローチで何かを作りたい」という思い。「知識は多少あったので新しい試みとはいえ、すんなり入っていけました」と宮本さんは振り返ります。

稚内周辺で豊富に獲れるカスベの利用法について、文献を読みながら一人こつこつと研究する日々。そんな時に偶然知ったのが、釧路水産試験場で行われていたサケの鼻軟骨からコンドロイチン硫酸を分離・精製する研究でした。試験場を訪ね、共同研究がスタート。当時の研究員の一人、武田忠明さんは「サケの技術はベースにありますが、カスベについては丸共さんの熱意と努力以外の何ものでもありません」と話します。

Material錠剤になりやすい性質が功を奏し、無添加に

写真:タマフクラ

粉砕されたカスベの軟骨。丸共バイオフーズではコンドロイチン1瓶に1kgの軟骨を使っている

カスベといえば煮つけや煮こごり、唐揚げ。市場に出回るのはこれらの料理に使われるヒレ部分で、中央の胴体部分は廃棄処分されます。その割合は重量の50%以上、場合によっては65〜70%とも。しかも稚内などの道北地域は、全国のエイ類漁獲量の4分の1を水揚げる一大産地。大量に廃棄される様子を目の当たりにした宮本さんが「もったいない」と思ったのも、ある意味、必然だったといえます。

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カスベの軟骨エキスにはコンドロイチン硫酸と同じくらいコラーゲンが含まれている(丸共バイオフーズ調べ)

カスベの特性には2つのラッキーな点があったと、宮本さんは言います。一つは、軟骨に脂がなかったこと。コンドロイチン硫酸の精製では脂を除去しますが、その手間がほとんどなく技術開発もスムーズに行えました。そしてもう一つは、なぜか錠剤になりやすかったこと。粉末化した軟骨を機械にかけたところ、添加物の必要もなく錠剤になったのだそうです。「これがうまく固まらなかったら、『無添加』というコンセプトの商品はできなかったかもしれませんね」。そう言って、宮本さんは目を細めます。

Technologyベースになった「サケ鼻軟骨から分離・精製する技術」とは

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話は前後しますが、釧路水産試験場がサケ鼻軟骨のコンドロイチン硫酸について研究を本格化させたのは、平成8(1996)年。未利用資源としてのサケ加工残渣の活用を目的とする一方で、コンドロイチン硫酸の原料となるサメの漁獲規制の動きや牛のBSE問題なども背景にありました。「サケの頭部というと魚体重量の10%くらいで、鼻軟骨はさらにその数%。微量ですが、残渣すべてを飼料にしたり廃棄するより、付加価値の高いものを回収しようというのが当時の発想でした」と研究メンバーの武田さんは説明します。

研究では分離・精製方法と共に、後発としてサメ由来のものとの差別化を図れる新機能の探索が行われました。前者では、コンドロイチン硫酸はタンパク質にくっついた形で存在するため、アルカリ分解や酵素分解によってタンパク質から分離し、ろ過した後に、ストロー状の穴があいた膜を通す「膜分離」という方法で繰り返し精製、純度95%以上のコンドロイチン硫酸を作り出し、特許を取得。後者の新機能では抗肥満作用が確認されています。

当初は化粧品や医薬品に向けた高純度のコンドロイチン硫酸ナトリウムをめざし、技術開発が行われましたが、一方で世の中は健康食品ブーム。研究の方向性も、膜分離を行うほどの高純度を必要とせず健康食品の材料など用途範囲の広いコンドロイチン、ムコ多糖・タンパク複合体にシフトチェンジし、工程も簡略化されることとなりました。その純度は20〜40%ほど。そしてこの、製品化により近い方法がカスベにも活用されています。


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肝臓組織の病理観察(サケの研究時)。白く見える部分が脂肪組織。左の「高脂肪食群」に比べて、右の「サケコンドロイチン硫酸1%投与群」のほうが脂肪化の程度が低い

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カスベの抽出エキスのろ過。工程は簡略化されたが、溶液に粘性があるため、ろ布を通りにくく、その解決でも試行錯誤が必要だった

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低濃度とはいえ、この美しさ。目に見える沈殿物はろ過で取り除かれる

Market機能を見いだし、裏づけを取る研究をその後も継続

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写真のコンドロイチンに続き、カスベの皮を使ったコラーゲンも商品化。現在の販路は自然食品系のカタログ販売ルートが半分、電話などで注文を受ける直接販売が半分

実用化に向けては装置の選択など工業試験場の力が大きかったと、宮本さんも武田さんも口を揃えます。さらに宮本さんは水試や工試のような試験研究機関について「特に中小企業にとっては無くてはならない存在」と断言。「自社で行える試験管やビーカーレベルの研究では限界があり、実験のスケールアップは不可欠です。その設備を持たれていることはもちろん、製品に結びつく研究をされているし、それぞれの専門家がいて他の試験場や大学との研究ネットワークもある。知りたい情報が集まっています」と話します。

加齢からくる関節痛の緩和や皮膚の保湿性向上など、一般にも知られる機能が増えてきたコンドロイチン。商品化後も、主流であるサメ由来のものとの差別化をさらに追求し、「無添加」という以外にアピールできる機能が裏づけも含めて取れないか、試験研究機関や大学と共同研究を重ねています。

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